【ご注意!!】
このお話は2nd第1話を見て「あの場面」だけでウッカリ浮かんだ妄想です。
雑誌やCDも聴いてないので公式の情報と違うかも知れませんw
『セルゲイとソーマが一緒に暮らす』
『ソーマが天涯孤独』
『セルゲイが奥さんと死別してる』
が前提です。
セルゲイ×ソーマほのぼの親子愛(それ以上?)
の妄想話OKな勇者のみ・・どうぞ(*^_^*)







このなるに    
・・・

〜セルゲイ=スミルノフ編〜



そろそろ夜の帳が深く降りたかという刻限。
旧人類革新連盟領の一角にある高級仕官住宅街。
セルゲイ=スミルノフ邸の周囲は静寂に包まれていた___






仕事を片付け居間に下りてくると、TVから今夜のニュースを伝える声が聞こえてくる。

『・・・連邦政府は反政府勢力撲滅の為、直属の治安維持部隊を展開することを決議致しました。
これからは連邦保安局と協力体制の下・・・・・・・・』


以前この世界は3つの勢力に分かれ、いつ終るともしれない戦いを繰り広げていた。
それが4年前のあの日。
私設武装組織『ソレスタル・ビーイング』が現れ、
世界中の戦闘行為に対して武力介入という名目で
”モビルスーツガンダム”という武器を投下した。


セルゲイの運命もまた、4年前のあの日から変わることになった。

所属する軍部内で”ソーマ・ピーリス”という少女に出会ったのも、4年前だった。
彼女は人革連が秘密裏に行ってきた軍事機密を体現化した”モノ”として姿を現した。
『超兵機関技術研究所』にて生体改造を行われた『強化人間』。
”超兵1号”・・・・それが彼女の名前だった。

その無表情の下には一切の感情が見受けられず、定められた命令にただ従うのみ。
全ての機能は過酷な状況下での作業、戦闘のみに向けられし”人形”。
人道にも劣る愚劣な研究をこの国がまだ続けていたのかと思うと
苦く暗澹たる気分にさせられたが、彼女に罪はなく。
ましてそんな彼女を元の人間に戻してやれるのかというと、
残念ながらセルゲイにはそんな力も無かった。




だが・・・・この4年の間に、彼女の中に「変化」という名の”何か”が
起きているのではないかと、セルゲイは思うようになっていた。






アナウンサーが淀みなくニュースを告げる中、携帯電話が着信を伝えた。
ディスプレイを見ると、良く知った名前だ。
電話に出ると、切れの良い口調で挨拶をする相手の声が聞こえる。

「ああ、大佐。・・どうした?」
『お寛ぎの所申し訳ありません。』
「いや、かまわない」
『今しがた、司令部より独立治安維持部隊への転属要請がありました。』

正に今、ニュースでやっていた件についてだ。

「・・・・・行くつもりかね?」
『噂の”アロウズ”。目にしておくのも、いいでしょう。』
「あの部隊には秘密が多い・・。内情を報告して貰えると助かる。」
『無論、そのつもりです。・・では。』
「ああ。」

用件のみを簡潔に伝えると、彼女はあっさり通話を終了させた。
電話をしている最中、ソーマが台所から姿を見せていた。
その手にはトレーが握られており、どうやらお茶の用意をしてくれたようだ。
カップをテーブルに置きながら、ソーマがさりげなく口を開く。


「マネキン大佐からですか?」
「ん?・・ああ、そうだ。」
「どのような用件で?」

彼女にしてみれば特に何の意図もないだろうが、聞かれた途端
何故か”アロウズ”の事を話さない方がいい気がして口を噤んでしまった。



独立治安維持部隊”アロウズ”。
「治安維持」等と謳っているが、実態は・・・逆らうものを一切許さず、
その弾圧は言動そして思想にまで及び、
非人道的なものになっているとの黒い噂を聞いた事がある。
無意識に私はこの少女を”アロウズ”に関わらせたくない、と思ったのだろう。
ソーマの問いには答えず、こちらから別の問いを投げ掛けて逸らす事にした。


「・・・・・・・。それより、例の件については考えて貰えたかな・・?」


一瞬の沈黙を不自然に感じたようであったが、
思った通り、問われた内容を理解した途端、動揺も顕わに口ごもってしまった。


「!!い、いえ・・・その・・・・・・」




・・・・・本当に彼女は「変わった」と思う。

動揺と困惑を顔に載せ、何と言葉を紡ぐべきか必死に考えているのだろう。
答えを急ごうと緊張しているのか、心なし頬に赤みが差している。
出会った当初の彼女からは想像も付かないほど『人間らしい』表情だ。
4年前、軍の『人形』であった彼女もまた、
『ガンダム』との戦いで心に変革が起きたのだろうか?

彼女と同じ超人機関出身のガンダムパイロットとの戦いで、
セルゲイは彼女をかばい大怪我を負った。
騎乗したMSも大破し、大事な部下も数名失ってしまった。
だが、セルゲイはこの戦いの中で失うばかりではなかったと信じている。
大声を上げて必死の形相で自分を呼び続けるソーマの姿。
自分の生存が確認出来た時の彼女の表情は、
激痛に苛まれながらもセルゲイの脳裏に焼きついていた。
あの時から彼女は『戦闘兵器』から『人間』へと変化し始めたのではないかと思う。

不器用ながらも少しずつ、自分に心を開いてくれるようになると、
もはや彼女の事をただの一部下と割り切れないようになっている自分に気が付いた。
大佐に昇進し、預かる部下の数も以前より増えたというのに
一人だけ特別扱いするなど、指揮官として本来なら許されないことだろう。


・・・・しかし、彼女は”超兵”だ。
実用化され成功した数少ない第一号。
皮肉にもそんな特殊な彼女の生い立ちと年齢が、
セルゲイの傍で庇護を受ける『特別』を許されていたし、誰も何も言わなかった。


そして世界は統一され、仮初めの平和の下・・・
彼女の心の領域に、「セルゲイ」という許容領域が出来たであろうと思われた頃。
セルゲイはソーマに対して、ある”提案”を申出てみることにした。



「これは提案なのだが・・私の、家族の一員になる気はないか・・?」


最初に告げた時、別の地区言語を聞いたかのような顔をされた。
しかし、脳の中で翻訳出来たのか言葉と意味が繋がった途端、
驚愕も顕わに目を見開いてこちらを凝視してきた。
この反応はある程度予想していたので、構わず説明を続ける。

「そ・・それ・・は・・・?」
「ああ、混乱させたか?だが、前々から考えてはいた。
君は天涯孤独だし、後ろ盾となる後見人も居ない。」
「わ、私は国の為平和の為の兵器ですから、そういった存在は無くて当たりま・・」
「”当たり前”だと誰が決めた?それと、自分を”兵器”だと言うのもやめなさい。」

そういう返答も可能性の中に入れていたが、
やはり最後まで言わせることは出来なかった。
・・・・・教育とは恐ろしいものだ。
年端もいかぬ子供の頃から、国の為に犠牲になることに何の疑問も抱かないようにされる。
ソーマはもうセルゲイとって「大事な部下」以上の存在になりつつあった。
存在をそんなに軽んじられては、困る。
だが・・・これ以上動揺させても意味がない。
表情を緩めて続きを口にする。

「・・これは、私の”提案”に過ぎない。決めるのは君だ。今すぐ結論を出す必要もない。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「よく考えて、答えを出してくれたらいい。」
「・・・・・は、い・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『YES』か『NO』か。答えは二択のはずだ。
だが・・・・自分は彼女の『上司』だ。
NOと答える事で被りえる状況を考えて、拒否することも出来ないのだろうか。
私は”提案”という言葉に強調を込め、
強制ではなく判断を彼女に委ねるように仕向けたが
そうする事が既に重荷だっただろうか・・・・・?

最初に聞いた時と同じように、思考を巡らせているのが見て取れて
少々申し訳ない気持ちが沸いてきた。
”提案”等と言葉を飾ってみたが、本当は私の・・・・・”希望”なのだ。

今、何を考えている?
もっと心を開いて欲しい。
もっと・・人間らしくなっていけばいい。


「・・・・なに、急ぎはしない。ゆっくり考えるといい。」



そう言ってカップに口を付け、この思考に整理をつける。
・・・・・ああ、もうこんな時刻か。
明日の合同演習は新型の説明があったはず。
飲み終えたカップをテーブルに置き、部屋へ戻ろうと立ち上がると
何故かソーマも立ち上がる気配がしてそちらに目をやる。


『そんな・・・不安そうな顔をして。』


この場で返事をしなかったことに後ろめたさでも感じているのか。
少し不安そうに揺れる瞳を見たら、自分がいじめたような感覚に陥り
可笑しさが込み上げてきた。

「・・・・・・明日は早い。そろそろ休んだ方がいいだろう。」
「あ、はい!大佐。」


此処は自宅だというのに、何だか演習場のようだ。
『やれやれ、仕方ないな・・・』

苦笑を浮かべたままソーマの頭に手のひらを置き、ぽんぽんと軽く叩いてやる。


「・・・お休み、”ソーマ”。良い夢を。」


意趣返しに”中尉”と言ってみようかとも思ったが、やめにした。
此処は『自宅』なのだから。
お休みを告げ、後頭部を撫でるように手を滑らせてソーマから離れ、部屋を出て行こうとする。

次の瞬間。
袖を軽く引かれる感覚があった。
視線を落とすと、ソーマの手に袖が控えめに握られているのが見える。
・・・・・・・・どうしたのだろう?





「おやすみ、なさい・・」





掴んだ手をぱっと離すと、何故か
”焦り”と”羞恥”と”親愛”の混ざったような不思議な表情で挨拶を返してきた。

こんなことは初めてだった。
いつもはさらりとセルゲイが一方的に挨拶して部屋に戻るので
ドアを閉める直前に微かな溜息や小さな言葉が聞こえてくる程度だったのだ。
引き留めて、視線を合わせて、告げられた挨拶。
また一つ・・・彼女の心の扉が開いたのだろうか・・・?

得も言われぬ暖かい気持ちに包まれ、自然と顔が緩むのを感じる。




いつからだろうか。
ソーマと過ごすこんな日常を、とても。
・・・・とても『楽しい』と感じる気がするのだ。
もう小さな子供ではないというのに、先程みたく頭を撫でてやりたくなる時がある。
そうして嬉しそうな彼女の顔を見てると、とても気分がいい。


どうしてなのだろう・・・・?


いや、そんな理由は分かっている。
だが、それは些細なこと。
思考の海に溺れる前に、休まねば。
明日に差し支えては大変だ。
胸の中に光を抱いているかのような暖かいものに包まれた今なら。
明日の目覚めはきっと良いものだろうと、珍しく楽天的な願望を持つ。

ベッドに潜り、電気を消すと早々に眠りの気配が訪れた。


『おやすみ・・・中尉。』


そう心で呟いてセルゲイは胸の中の光を抱き締めたまま、眠りに落ちていった。








・・・・更に、すみませんvv
セルゲイがただのロリコンみたくなっちゃったよーー・!?
でも、自重出来ませんでした・・・。

「例の件」が全く違う事だったらいい恥ですが、これは私の妄想なんで・・・
←軽く言い訳。