運命の邂逅1(2)

 
「防御魔法の使い手・・・か」

 実際にこの目で見たのは初めてだ。
 達海には何故か防御魔法を上手く扱えない。
 突然飛んできた攻撃魔法を完璧に撥ね退け、自分を守ったかと思えば
時間がないからと慌ただしく去って行った青年。
 去り際にぽんと頭に置かれた手がやけに温かく感じて、しばし達海は
その去って行った方角を呆然と見ていたが、後ろから腕を掴まれ我に返った。
 
 先程自分達に向かって威嚇魔法を飛ばした騎士だ。
 どういう状況だったのかを説明しろときたもんだ。
 自分だって、そもそもこんな厄介事に関わりたいわけではなかった。
 馬鹿な自己中共が騒ぎなんか起こさなければ・・・・
 そいつが自分の剣に目をつけなければ、通り過ぎていた。
 面倒くさいが、起こったことを簡潔に説明してやった。

「・・・とゆーわけで、オレは被害者なの」
「もう一人はどこへ行った?」
 こっちの話を聞いていないかの如く、質問を重ねてくる。
「もう一人?」
「私の魔法を弾いた青年がいただろう?お前の仲間か?なぜ逃げた?」
 矢継ぎ早に質問攻めしてくる騎士にうんざりときたが、一つ言っておかねばならない疑問が混ざっていたので、答えてやる。
「別に逃げてねーよ。全然知んない奴だけど、アンタの危ない威嚇から助けてくれただけだし」
「・・・何?」
 嫌味を込めて言い放ってやると、流石に反応しこめかみをひきつらせたのが見えた。
 だが、そんなこと知ったこっちゃない。
「急いでるからって、闘技場の方角へ走ってったんだから大会に出るんじゃねーの?」
 闘技場を指さしながら指摘してやる。
 すると、「そうか・・・」と言い別の騎士を呼び何やら指示を出し行ってしまった。
 実は達海も武闘大会に出場する予定だが、光魔法の使い手なので二回戦からでいいと言われ、
少しのんびりしていた。


 そもそもの発端は半年ほど前の出来事だった。
 その日は久しぶりに郊外の森でのんびり昼寝していたら、悲鳴が聞こえてきて、
商人が魔物に襲われてたのを助けてやったのだ。
 そのとき魔物に対して使ったのが光魔法だったが、達海はそれまで自分の使うそれが
光魔法と知らずに使っていた。
 騎士団長の笠野がその時の状況を見ていて、「へ〜、ぼうず面白い素質持ってんじゃねぇか」
と教えてくれたことで、自身の魔力の特殊性について知ったのだ。
 その時武闘大会に出てみないかと言われ、「やだよ、めんどくさい」と最初は断ったが、
光魔法の形態などを自分で調べていくうちに、自分の使う力の本質を知りたくなった。
 この力を大ぴらに出せるとしたら、魔物に遭遇した時位だと思ったけど、
武闘大会なら相手も攻撃してくるわけだし丁度いいかもしれないと思いなおし、
大会にも出ることにしたのだった。
 

 それで会場に向かって歩いていたのだが・・・この有様である。
 さっきの奴ではないが災難としかいいようがない。
 先程の騎士と入れ替わりに傍に来た騎士に向かって話しかける。
「あのさー、もういい?オレ、この後武闘大会に出る予定なんだけど」
「・・・・え?」
 そう言って、目の前の騎士が時計を見る。
「だからー、闘技場に行くから・・」
「何故それを先にいわない!?」
 言葉尻を奪われた上に責められて少々むっときた。
「はぁ?!」
 険も露わに睨んでやると、目の前の騎士は達海の態度は意に介さず闘技場まで送ろうと言い出した。
「いや、そこまではいーよ」
「だが、このままだと君はエントリーに間に合わない」
「エントリーってゆーか、オレ笠野のおっさんに二回戦から出ろって言われてるから
行くんだけだし・・・」
「笠野・・・団長に?君は・・・・いや。とにかくそれなら尚更無事に送り届ける必要がある」
 そう言い騎士は達海の腕を取り、どんどん歩いていってしまう。
「いや、だから・・人の話聞けよ・・・・」
 最初に攻撃してきた奴と言い、騎士とは人の話を聞かない奴が多いなと頭の中で愚痴っていたら、
馬に乗るよう促された。
 つっぱねても面倒くさい事態に陥るだけだし、時間がないのは確かだから
取りあえず従い送ってもらうことにした。利用したと思えばなんてことはない。

 そうして達海は無事闘技場へ着き、自分の試合にも間に合い、順調に勝ち進んでいった。